魚藍坂。
白金高輪のほど近いところにその坂はあった。
人にはそれぞれ様々な癖がある。いまさら申すまでもないが、咳払いとか、貧乏揺すりとか、鼻の下の匂いを嗅ぐとか。
それこそ星の数ほどある。
それらを見つけ眺めて、人知れずこころで遊ぶ、
そんな癖が子供の頃からあった。
オレには、およそどんなたぐいの癖も皆無であったと思い込んでいたので、最近になって、はたとこの矛盾に気が付いたときは赤面した。
斜めな人間であった。
くるみの殻の中で世界は取れるなどとうそぶく少年である。
それが宇宙の憧れと照れ隠しだと云ったところで、誰もそんなこたあわからない。
ブログ投稿はそんな懺悔の念を込めて曝け出す。
まあ少し意地をはってるふしもある。
しかし、明らかに世界は変わった。
いま、だらだら坂を登りながら歌えよ歌え、吟遊詩人の歌を。
オレはいま、たまたまここに生まれし人間であるが、前の命は禿鷹としてインダスの墓場の空を飛翔したこともあり、ナイルのワニとして百年生きたこともある。
あるいは夜盗が所有する鍵束の一個であったこともある。
ある時はもみの梢にやどりぎとして生まれ、ささやかな枝を伸ばしたこともある。
貧しい漁夫の煙草の煙となって瞬時の生を享けたこともあれば、一匹のナマズとなって子供に釣り上げられたこともある。わははは。
歌えよ歌え。
吟遊詩人のボレロを。
いぶかしげに振り返る若奥さん。
そんな気分の春なんだよ。
リュウスケ
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