2011年7月20日水曜日

拾独詩調其の四

『桃源郷にて』

彼女と二人
桃源郷を彷ようた

彼女の為に
果実をひとつ採る
しかし彼女は――
樹の下で、其の上の果実を指差す

俺は其の上へ捩じ登る

しかし彼女は――
樹の下で、もっと上を指差す

俺はもっと上へ捩じ登る

しかし彼女は――
樹の下で、更に上を指差す

俺は更に上へ捩じ登る

確かに残酷な
彼女の冷めた表情を見た

そうして枝は先細り
重さに耐えられず遂に奈落まで

これで、俺は
生きても松葉杖だ


『拾独詩調』
風の吹く夜に
ナガトミリュウスケ

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