『桃源郷にて』
彼女と二人
桃源郷を彷ようた
彼女の為に
果実をひとつ採る
しかし彼女は――
樹の下で、其の上の果実を指差す
俺は其の上へ捩じ登る
しかし彼女は――
樹の下で、もっと上を指差す
俺はもっと上へ捩じ登る
しかし彼女は――
樹の下で、更に上を指差す
俺は更に上へ捩じ登る
確かに残酷な
彼女の冷めた表情を見た
そうして枝は先細り
重さに耐えられず遂に奈落まで
これで、俺は
生きても松葉杖だ
『拾独詩調』
風の吹く夜に
ナガトミリュウスケ
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