ヤドカリ酒

雨が降りそうなので、いや、ぽつんと雨がひとつ落ちて来たので、めくらに暖簾をくぐったら、そこはイイ雰囲気の居酒屋であった

久しぶりに会う友達同士
ウーロンハイを注文して、我々はひといき入れた

カニカマはいったい何の蟹をイメージしてるんだろね、蟹にも色々あるけれど

越前蟹だろ、いやたらば蟹だろ、毛蟹ではなかろうか

などと、僕らはムドウサに出されたカニカマの入った『御通し』を箸でつつきながら話していると
カウンターから、見知らぬおやじが振りかえる

『たらば蟹はカニではない、ヤドカリなんだよ』

つまりこうゆーことだ
カニの王様たらば蟹、と、もてはやしているが、若造めら、あいつらは『カニ』ではなく、『ヤドカリ』の仲間である

お前たちはヤドカリをありがたがって喰らうてるんだまし

いきなり、そんなようなお話しだった


路地裏に本格的な雨が落ち出したのが店内から見えた

『そうなんだ～』と
おやじに相づちを打つ

おやじはご満悦


しかし話の腰を折られた我々
そこにビミョーな空気が流れる

なんか悔しくて
おやじに質問してみた

では、一般的なヤドカリの仲間は貝を背負ってるからヤドカリで、、と云うことは、ヤドカリの進化の過程は貝ありきでしょうか？

貝がなければ今ごろ何を背負っていたのですかね？


おやじはカウンターに向き直り、背中を丸めて手酌酒

店内のテレビはスポーツニュース
アナウンサーがプロ野球の結果を伝えている

雨音が高くなった
いぢわるなのは誰だ？



今朝の『この一曲』

The STYLE COUNCIL

『My Ever Changing Moods』

アルバムバージョンで
お願いします

ひとしきり降った雨
からっぽになった今朝の空

イイ一日を

リュウスケ